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日本分水嶺

 30年ほど前の事だ。クライアントのHさんの知人が日本分水嶺を走破中だと言うのを聞いた。ライフワークにしているらしい。「ほぉー、面白いじゃないか俺も始めようか」と思いついた。分水嶺とは稜線の右に雨が降ればその雨粒は太平洋に、左に落ちればその雨は日本海に流れるという分水界のことだ。
 北海道から鹿児島まで十数回に分ければ長期休暇を取らずに走破が出来る。
 先ずルートだ。本屋で探したが「分水嶺」なる資料は出ていない。国土地理院に電話したのだが電話に出た人はもし、そのような資料があれば是非、入手したいと応えていた。
 仕方なく2万5千分の一の地図で調べようとしたが莫大な時間が掛かるのと地図だけでは解読困難だったので諦めていた。
 いま検索すれば5年前に日本山岳会が正確な「中央分水嶺踏査」を発表していた。3年掛かったそうだ。

 分水嶺を歩くのは容易なことではないのは想像出来る。登山道だけではなく道なき道も歩かなければならない。ヤブこぎだ。
 今、フリーの身だからその気になれば、7〜8回に分ければ走破可能だ。途切れたって気にしない。ただその気に成るかどうかだけだ。肉体が衰えれば精神も衰える。世の中には年齢により出来る事と出来ない事が存在する。今からエベレストに登ろうと思っても無理な話だ 三浦雄一郎では無いのだから。
 そのHさんも山男だった。なんと30年以上前にエベレストに登った人だ。当時Hさんが会社でエベレストに登頂する人を募り実行した人だ。当時の話を聞いたが「本」に出来るほど面白かった。会社で登山隊を募った時は応募者が多数出たが「これに参加すると3〜4ヵ月の長期休暇を取らねばならず、今後、出世は100%望めない」と付け加えると参加者は激減したという。そのHさんもリーダーシップのある人で有能な人だったが本社の出世コースから外れ支店長どまりだった。
 夢を追う事は犠牲にする物も少なくない。