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渾身の一作

 先日、探し物をしていたらあるファイルの中から30年前に作った作品が出て来た。我々の仕事は記録に残るのが良い。中々よく出来ている。
 今、出したとしても十分通用する。
お仕事の話は始めてだが、備忘録も兼ねて少し書いておこう。
 
 その仕事はH社の40ページほどのバイク絡みで用品、ファッションの総合カタログ2種類だった。
 
 最初に打ち合わせに行った時に「一カ月後の販売店大会に総合カタログが絶対必要なんです」と言われた。ファーストの打合せで何も決まってない中、いきなり納期を言われた。心の中では「アリエヘンやろ」と思っていた。
 一体どの様なスケジュールを組めばよいのか・・・? 通常は3ヵ月以上は掛かるだろう。
 
 「何故、もっと早くスタートさせないのか?」 ─── てな事を言った処で始まらない。しかし何所のクライアントでも同じようなモノでギリギリにならないと発注しない。
 その打合わせが終わってエレベータに乗ろうとした別れ際、先方の担当に「先程の納期の件ナンですが、一ヶ月後って言うのは本気じゃ無いですよね?」と笑顔を作って聞いてみた。すると相手のH氏は「本気ですよ」と笑いもせず答えた。
 同行した営業とコピーライターは顔を引きつらせて作り笑いをしていたが実際はどんなに困難か解っているのはデザイナーの私だけだった。
 
 それから壮絶な一ヶ月が始まる事になる。ラフを作り、撮影コンテを作り、ロケが3、4日続き、スタジオ撮影が一週間ほど、それから版下作成に入り印刷工程に入る。
 スタジオも都内と横浜で3カ所ほど、カメラマンが4〜5名ほど。一つの大スタジオを三日間借り切り3〜4カ所ステージを作ってそれぞれ製品撮影をしたこともあった。
 
 その全てを私がディレクションするのだ。私はその会社に入ってまだ2〜3カ月程で28歳ぐらいだと記憶している。若くて実力も判らない奴に仕事を任せるというのは「私を試しているのか?」と思ったほどだった。
 しかし仕事内容は会社側も全く把握してなかったから「試す」事など出来なかった筈である。たまたま大きい仕事を持っていなかった私に回って来ただけの話なのだ。そこの会社はビギナーなど受け入れなかったので社員は全員プロだった。
 
 長くなったので一旦ペンを置こう。