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渾身の一作 2

 ロケは普通、ロケハンを行ってから後日、ロケをするのが通例だがそんな余裕はない。しかしチーフカメラマンから「休みにロケハンしといて」と言われ行ったかも知れないが記憶があやふやだ。その時は信州界隈にロケ地を設定し、ロケハンをしながらEー場所を見つけたら撮影を行うと云う組み方であった。
 もちろん私もスタッフも事前に大体のあたりは付けていた。まったく当てなど無く、行動は起こせない。そこはツーリング経験豊富な私が適任だったかも知れないが会社側もデータは持っていた。カメラマンもスタッフも同じような仕事の経験が無いと務まらない。だからH社から仕事が来たのであるが・・・。
会社力とはマンパワーなのである。
 
 そのロケもモデル4名とスタッフ4、5名、クライアント1名、トラック運転手にロケバスの運転手の総勢12〜13名を連れての旅回りだった。テーマは “ツーリング ”だった。おまけに行き当たりばったりで初日の宿以外、決めていなかった。携帯も無い時代である。電話ボックスが頼りであった。
 
 宿を決めないで旅をするのはソロツーリングでは私の場合、いつもの事だが10名以上を予約無しで行うのは始めてで、今では考えられないはなしだ。
 若かったのであろう「どうにかなるさ」程度にしか考えなかった。てゆーか心配などしている余裕すらなかった。

 信州ロケは半分、遊びのようなモノだった(私以外は)。周囲からも仕事をしているとは見えず、観光客の一団と見られていただろう。
 
 そのロケ現場で一寸した事故が起こった。製品(二輪)を乗っけていたトラックが未舗装道路でUターンに失敗し転びそうになり 傾いてしまったのだ。
 トラックを救出するために急遽クレーン車を呼ぶ羽目になった。全く勝手の分からない片田舎の牧場である。日程が狂ってしまった。
 いくら請求されるのか心配だったがクレーン車に支払ったのは1万円位だった。クレーン車が到着してから、わずか15分足らずの作業だったが・・・。
 ロケ地では全員の昼食も心配しなければならなかったが、私はそんな余裕すらない。ロケマネージャーを連れて行って正解だった。
 
 その仕事のクライアント側の責任者は下っ端ではなかった。部長クラスが担当になった。私と20ほど歳が離れていたと思う。
 昔、本社の宣伝部にいた花形だったが「山好き」が高じて超、超、長期休暇を取りエベレストまで行って出世街道から外れた人であった。
 人望も厚く、よく物事が解っていた人間であった。こんな短納期で大きな物件は発注側の責任者が下っ端ではうまく行かないと判断し、自ら責任者になり窓口になってクライアント側でやれる事を全てやってくれた。
 
 こっちは下っ端担当に電話を掛けなくて済んだのと決定権のある人が窓口になった事で仕事がスムーズに流れ助かった。もちろん責任者は社内調整はやっていただろうが・・・。
 
 一度、私が目一杯になり、ヘトヘトになっている時、昼食に出るついでに掲載する製品リストをもらいにクライアントに出向いた事があった。するとその人が周りの人と将棋を指していた。それを見た私はカチンと来て「よくそんな事をやっている余裕など有りますネー」とイヤミを言ったのだ。すると、H氏は「Tさん、“忙中閑有り”と言うんだよ」と逆に説教された。
 その通りなのだ。私が彼にイヤミなど言う筋合いなど無かったのだ。忙しいのは私の所為で、私が忙しいのは彼とは関係がない話だったのだ。単に手際が悪いだけなのだ。しかし、かなり要領よくやっていたハズなのであるが・・・。
ここら辺で一服。