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谷川遡行2

空を見ながら滞っていると上空の霧か雲が風で一瞬だけ取れた。
上空に送電線がハッキリ見えた。「あ、此処だ!」と叫んだ。
Y氏の主張は正しかった。そんなに理論的な事は話さなかったが・・・
確か理工系では無く文系だったはず。理系だったのか?
とにかく登山の際には身の内話や会社の事など一切話さない。
それがルールだ。
 
本流から、横から流れる沢に入って名も無き沢を登り始めた。
分岐をそのまま進めば夜になって沢でビバーグになっていた筈。
 
しかしその横の沢は石に苔が張り付き、遡行がかなり困難だった。
苔が着いた石岩は滅茶苦茶滑るのだ。
わたすのワラジは既に両足のワラジが切れ、捨ててしまっており地下足袋
だけになっていた。
当時の沢登りは地下足袋にワラジを履くのが主流で渓流足袋はまだ無かった。
 
その沢はわらじが無いと滑ってとても前に進めなかった。
ワラジは滑り防止具である。
そこでYさんに一つだけワラジを貸してもらえないかと言うと快く良く
一方のワラジを脱いで貸して貰えた。
Yさんは気が優しい。わたすと段違いだ。
その山崎さんとも20年以上連絡が取れていない。
わたすも引っ越して連絡が取れない。
当時の連絡先も無い。
わたすはこうして一人になっていく・・・仕方ない事か。