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谷川遡行

登山のシーズンだがここ数年、本格的な登山には行ってない。
まだ残っている三大岩稜歩きは槍ヶ岳の北鎌尾根だ。
一人では心細い。元パートナーのTさんとも20年以上、逢っていない。
 
誘えば乗って来るがわたすの体力の劣化により彼に迷惑を掛けたくない。
筋肉の劣化、脳味噌の劣化だ。岩登りは結構、頭を使うのだ。
ルートファンディングを出来ないとダメなのである。
直感的なルートの見定めと客観的な見定めが必要なのだ。
直感的な見定めで登れるのは3級までか・・・
わたすは直感的なルート選びには自身があるが、その後、何処に手がかり
足掛かりを見定める能力が無い・・・と思う。
要するに5メートルは登ることが出来るがその後どうやって登るかが問題に
成る。
 
話は代わり、もう30年ほど前になると思う。
谷川岳の本流を遡行していた。T氏とY氏とわたすの3人でだ。
登り始めの時間が遅くなりかなり焦っていた。
おまけに久しぶりに再開したので最終の上野発、長岡駅行きの列車で
わたすがウイスキーで結構酔っ払っていた。
土合駅で下りてあの名物の階段で凄い行列だ。
今でもその光景は有るのか知らない・・・まあ無いだろう おそらく。
 
谷川本流を遡行する際、長いゴーロ歩きが有る。
そこを歩いている時、後の二人に、酔っぱらってフラフラしていると言われた。
しかし核心部に入ると酔がさめシラフだった。
その沢は時間の掛かるコースだ。おまけに歩き始めたのが遅かった。
コースガイドには時間が足りなくなった場合のエスケープルートが
乗っている。
遡行している際、このまま行けば日暮れてしまうと我々にも認識出来ていて
エスケープルートを取る事を互いに了承していた。
 
その日は朝から曇り空だった。
エスケープルートは地図では本流の左から沢が流れ出てくる。
本沢の沢登りの核心部が終わって予定通り左から小さい沢が現れた。
その分岐が此処なのか随分悩んだ。

地図を見れば上空に新潟からの送電線が有る筈だった。
此処に送電線が無ければ絶対イケナイのだ。
電線が見えないので「エスケープの沢はこの先だろう」と私は主張したが、
Y氏は「此処の上空に送電線が無いとオカシイ」と強く言い出した。
夕暮れが迫っていた。

続く