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東京物語

 さっそく小津安二郎の「東京物語」を借りてきた。「二十四の瞳」を返す際に入れ替わりに借りたのである。
 尾道に住んでいる老夫婦が東京にいる息子や娘や孫を訪ねるという淡々としたホームドラマ的な筋書きだ。
「まあ、しんどくても3〜4回に分けて観ればイイや」と思っていたが一気に観られた。大人になったのである。

 夫婦愛や家族愛などがテーマなのだが「核家族」の話しでもある。日本の家族の構図が揺らいで行くと言う様な・・・。
 劇的なストーリー展開など有りはしない。小津作品はそのような「家族」を描く監督だから。
 しっかし、「原節子」演じる “のりこ”は Eー人過ぎる、こんな出来た人は当時でも居ないだろうと思うが小津安二郎は理想像を原節子に演じさせたのであろう。
 当時観賞した人は一遍に原節子のファンになったのだろう。
 おそらく、こんな役ばかりだった原節子は現実とのギャップにさいなまされ突然引退したのでは無かろうか? 推測だが・・・。
 
 しかし笠知衆は酒を実に美味そうに飲むのには参った。あまりに美味そうに飲むからこっちもビデオを観ながらチビリチビリ始めてしまった。
 実際は笠知衆は一滴も飲まない下戸だったという。撮影の打ち上げや合間の席でも全く飲めなかったと回想していた。「一番残念だったのは小津安二郎が大の酒好きだったのに一度も酒の相手を出来なかった事だった」という事を何かのインタビューで答えていたのを覚えている。
 飲めない人が旨そうに飲むのは演技なのだ。
 
 小津の映画の構図はどうして人を並列に並ばそうとするのだろう? という疑問が沸く。もっと自然な配置にすべきだと思うが彼の美的感覚なのだろうか?
 ほんの少し角度を付ければ絶対に自然だと思えるシーンが幾度となく有る。
 冒頭の東京に旅立つ老夫婦の荷造りのシーンも夫婦が並列だがこれはイカン、不自然に見えてしまう。背中合わせか、カメラ正面と横向きで無ければイケナイと思ったモノだ。そのように思えるシーンが何カットか有った。ワザとやっているのか?
 ポジショニング専門スタッフを付ければ良かったかも知れないが、そんな職業、今でも無いか? オラがやってもいいけど・・・
 しかしこの監督はローアングルのカメラ回しが多い人だ。カメラを下げると奥行きが出ないが、ホームドラマに奥行きが要らないのだろう・・・おそらく。
 
 映画は「観る時の年代によって感じ方が全く違う」とつくづく思った。小学校の時代全くダメだった小津映画もグーッと来た。
 わたすもスピルバーグの作品を小学生の時に観たらスピルバーグのファンになっていたかも知れない。大人になって観たとしてもその世界に入っていけない事も多い。もっとも同年代の人間が「スピルバーグを解らんと言うオマエが解らん」と言う奴もいるが・・・。
 また次の機会もう一本、小津作品を借りてこよう。