独身時代はしばらく一人で自炊していた。
しかし面倒くさくなり一日空き、また二日空き、そのうちしなくなった。
会社の帰り定食屋で済ます様になった。
しかし、そこの定食屋は味噌汁が超不味かった。
何故そんなに不味く作れるのか不思議だった。
仕方無く定食を頼んだ時、必ず「汁抜き」と注文していた。
私が「汁抜き」と注文すると同じ頃に入店した客も「あ、オレも汁抜き」と
注文していたから誰にも不味かったのだろう。
おかずは普通だったが味噌汁は不味すぎた。
学生だった頃、夏休みのある日、新宿で土木作業のアルバイトをしていた。
昼に現場近くの飯屋に入って定食を食べていると其処の味噌汁がとても
美味しくてお代わりした事がある。
三杯目をお代わりしようかと思ったが汁を三杯、お代わりする奴はバカである
という言い習わしがあるからやめておいた。
其処のおかずは美味くは無く、真夏に慣れない土木作業の重労働したので
汁物しか受け付けない状況だったのだろう。
味噌汁でお代わりしたのは其処の店と巣鴨のトンカツ屋「正楽園」位だ。
正楽園はとても人気が有ったのに閉じてしまったが・・・。
正楽園の味噌汁は “シジミ汁 ”で、ちょっぴりピリッと来た。
何でピリッと来るのか分からなくて店主に聞くと胡椒を振っているのだと言う。
シジミの泥臭さを消す為に胡椒を入れるのだと言っていた。
それを聞いてから我が家でもシジミ汁には必ず胡椒を振りかける。
シジミ汁に振りかける胡椒は黒胡椒より白胡椒の方が絶対にEー。
シジミ汁にはネギを入れると不味くなるから入れてはいけない等の不文律がある。
正楽園のシジミは超小粒で身を食べるのは殆ど諦めていたが
その店より美味いシジミ汁は一度も味わった事が無い。
汁をお代わりするといつもシジミ汁が大盛りで出てきた。
