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ポートレート

 母が生前、「死んだ時、この写真を遺影に使ってくれ」と言っていた写真があった。その時は私も弟もまったく現実感が無くて軽く受け流していた。しかし別れは突然訪れ「さようなら」「ありがとう」の言葉もかけられなかった。通夜の前に葬儀屋から遺影に使う写真を用意してくれと言われたが、母の希望していた写真は探しても出てこなかった。
 しかたなく別の笑っている写真を使用した。葬儀も終わり何日か経って家を整理している時にアルバム置き以外の所からその写真が出てきたが後の祭りだった。その写真は40才位でベレー帽をかぶり、少し澄ました写真だった。まさに宝塚風の昭和の写真だった。最後は「宝塚スター」気分でいたかったのだろうかと思った。少しでも意に沿う様にとその写真を居間に飾ってあげた。