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ノミ屋

従兄弟の一人に“遊び人”がいた。
一応、会社員になっていたが殆ど仕事もせず収入ゼロで「健康保険料を
毎月会社に支払っている」と言っていた。
兄貴の手伝いを偶にやる位で殆ど賭け麻雀で稼いでいた。
 
しかしもっと楽をしようと “のみ屋”を始めた。飲み屋では無くノミ屋だ。
いわゆる個人違法馬券屋である。
 
それを始めてからかなり儲かったらしい。
彼には悪友も知り合いも多いので手広くやっていたようだ。
しかしそんな上手い事は長続きしないのは世の常である。
 
ノミ屋は暴力団の専売特許である。
そこに素人が手を出すにはかなりのリスクが要る。
本来は暴力団の加護無しではやっていけない世界だ。
 
そのうち地元の暴力団に目をつけられた。
自分たちのシマを荒らされて来たからである。
黙っているわけには行かない。
潰さなくては自分たちの食い扶持がままならない。
 
どうするか?
直ぐ、暴力装置をちらつかせて追い出すと言う手もあるがヤクザは
そうはしなかった。
ナンと彼の客になったのである。
 
最初は10万円くらいから始めて負けると翌週2倍の20万賭ける。
それにも負けると40万賭けてくる。翌週は80万だ。
倍々に賭けてくるのだ。
とうとうマル暴は何週間後かに高配当馬券を当ててしまったのだ。
その配当返済額は数千万円に達したのであろうか?
 
無論、返却する資金などは有るわけ無い。
どうしたか?
速攻で逃げたのである。かなり遠くに。
以来、彼は東京には一度も戻って来られない。
 
ヤクザの方は商売敵を潰すのに成功したのである。
ヤクザがシロウトのノミ屋を潰すのはこのやり口が多いのだろう。
出資する金額が多いが客を奪われずに済むし商売敵を追い出せるし、
暴力装置を使わないからK察の厄介にもならない。
一石二鳥なのだ。
 
その従兄弟はその後の消息は判らない。
戻れば半殺しにされるか、東京湾に浮かぶ事になるので一生戻れない。
もう40年前の事だから暴力団にも忘れ去られているかも知れないが
ヤクザは執念深いらしい。
「時効だ」と言っても常識の通用しない人達なのだ。
  
ノミ行為は会社の中だけにしておくべきである。