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野火

気になっていた “野火”を先日、観てきた。
南方戦線で人肉食などのエピソードを挿入して話題になっている映画である。

戦争の残忍さ、酷たらしさ等がテーマなのだろうが全く伝わって来ない。
リアリティー ゼロだ。
究極の飢餓の状態なのに俳優の演技に憔悴感や悲壮感が全く感じられない。
徹底的にやせ細った人間を起用するとか俳優に絶食させて役作りを
させるとかやらせず、健康そうな人たちばかりでは物語に入っていけない。
主演の男が肺炎だと・・? 健康そうにしか見えないじゃないか。
 
監督が何十年も構想を練って来たそうだが、それにしてはお粗末過ぎた。
せめて撮影日前の2〜3日は俳優に絶食させるくらいはやるべきだ。
色艶が良く、肌がテカテカしている敗残兵は無かろう。
 
血なまぐさいシーンばかりだがそれだけでは悲惨さも狂気も伝わらない。
ゾンビ映画では無いだろう。
 
監督は生き残った日本兵に徹底的に取材して撮影に望むべき所なのだが、
表層的にしか表現出来ず、何も伝わって来ない。
もっとも、人肉を食らった経験のある日本兵は殆ど取材には応じ無い
らしいが・・・。
それ程、想い出したく無い、晒したく無い出来事だったのであろう・・。
 
昔ドキュメント番組だったと思うが、ある旧日本兵は「人肉を食らった兵と
食わなかった兵はひと目で分かった」と証言していた。
人肉を食らった人間は色艶が良くて顔に脂が出ていたとも言っていた。
別の証言では米軍白人の肉を白豚と言い、黒人のを黒豚と称して食したと
言っていた。
生き残るために人肉を「豚」と称して食うしか無かったのであろう。
この映画では豚ではなく「猿」になっていた。
 
「ゆきゆきて進軍」では部下をでっち上げの罪で銃殺しその肉を隊員が
食らったという悍ましい狂気事件が語られていたが、そのような戦慄的な
事は何も無い。
 
何か一つ位、この映画で良いところを振り返ろうとしたが何も出ず、
強いて上げるならば数カット出てきた南国の空くらいか?
 
お粗末の一言に尽きる。
一番、残念がっているのは大岡昇平さんだろうか?