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喫茶店

40年ほど前は銀座には今より喫茶店が6〜7倍ほど存在していたろうか?
サラリーマン連中が昼食後、必ずと言っていい程、茶店に入っていた。
私も御多分に洩れず、仲間や或いは一人で茶店に入った。
昼休みの1時間の内、半分は茶店にいた。
そこでゆっくりリフレッシュしてから午後の仕事に打ち込むためにだ。
 
しかし、いつの間にかそういう習慣が無くなり昼を済ませたら席に戻り
ネットで時間を潰す時代に代わった。
 
私はどんなに忙しくても昼は外に出たモノだ。雨にも負けず風にも負けず。
20代前半の頃、銀座の1丁目から4丁目の隅まで足を伸ばしていたモノだ。
流石に5丁目より先には行く余裕は無かったが・・・。
 
かなり気に入っている茶店があった。そこは2丁目のかなり昭和通り
方まで歩いた所にあった。その近くのキジ丼屋に入った後、必ず寄っていた。
珈琲はレギュラーとストロングが有り、私はいつもストロングを注文していた。
ストロングとはアメリカンの真逆でかなり濃かった。
他の客は9割以上レギュラーの方を注文する。
 
そこの店も昼時はメチャクチャ混み合う。
レギュラーの方はまとめて10数人分を一気に淹れるのだが
滅多に注文されないストロングは、そのつど作るから時間が食われる。
数分の間、一人の店員が掛かり切りに成る。
 
ある日からそこの中年のマスターか、チーフだろうかストロングの注文を
受けると「時間が掛かりますよ」と言う様になった。
「構わないよ」と私は気にしなかったのだが・・・。
 
次に行った時、いつも通り「ストロング」を注文すると直ぐコーヒーが出てきた。
なんかオカシイ。いつもは10分近く待つ事もあったのに。
香りも変だし、一口飲むと「マズイ、なんだこれ、いつものと味が違う」
と思った。
 
あきらかに暇な時、淹れたコーヒーで電熱器に掛けっぱなしだったのだろう。
コーヒーメーカーで淹れたコーヒーを電気 入れっぱなしと言う味だ。
抗議を込めてその後、一切口にしなかった。
出て来たままのコーヒーを残し、勘定を済ませて店を出た。
 
まったく裏切られた気持ちだった。
もちろん、その日を境にその店には一度も行く事は無かった。
店にとって客を一人減らしたのは間違い無い。
 
当時、在った喫茶店は殆ど残っていない。
何度も通ったところは一軒も存在しなくなった。
残っていてもドトールなどに替わってしまっている。