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やっと生還

・・・昨日の続き

日が変わっても事態は一向に良くならず、相変わらずラッセルが続いた。
膝までのラッセルが続く。
ザックを捨ててゴロゴロ転がり落ちた方が早いくらいだ。
 
2日とも快晴だったのが幸運だった。
遅くても昼には麓に着けると思っていたがこの状態だと時間だけが
過ぎてゆく。おまけに標識が見えず何度も迷い込む。
 
「このラッセルをなんとかしたい」・・ 雪の上で休んでいる時に考えていた。
ある事を想い出した。昔、読んだ本で杉の木の枝葉を使ってワカンとして
代用するという方法がある。


↑この枝葉を3本か4本 重ねて登山靴に細ひもで縛り付けワカン代わりに
すると言う方法だ。杉や檜は腐る程ある。
 
早速、試してみた。すると沈み込みが半分ぐらいになった。随分楽になる。
スピードも出始め、希望が見えてきた感じがした。
 
どうにか標識のある「賽の河原」まで来れた。
下山し始めて初めて見る標識だった。ここで撮った写真は笑顔だらけだ。
余裕が無いとカメラも取り出す気がしないのである。
ここで休憩し氷イチゴを食べる。イチゴシロップを雪に掛けるのである。
美味しい。夏に冬山のために準備していた物だ。
どんな時でも遊び心を忘れてはいけない。
もう半分以上は来ているハズ。しかし、まだまだ続く。
 
どうにか植樹林まで出られ、しばらく歩くと車道に出られた。
「やっと終わった・・・」
少し歩くとバス停の所に売店があった。
そこに入ると店のオバさんが「ギョッ」とした顔をした。
私のサングラスが壊れて片側だけレンズが無くなっていたのである。
「独眼の海賊」になっていたのだ。
 
そこの売店に公衆電話があったので相棒のTが「無事下りた」と家に電話した。
すると彼のお母さんが日曜に帰る予定なのに戻って来ないので心配になって、
私のアパートに電話したが出ないし、途方に暮れ私の会社に出社しているか
電話して聞いたそうだ。
 
すでに昼の3時も回っていたし 今更、会社に「休みます」と電話したところで
意味無いので電話する気は無かったが騒がれては困るので連絡した。
バスの時間まで結構あったのでタクシーを呼んで清里まで行き電車に乗った。
 
翌日、何食わぬ顔をして会社に行くと受付の女性にもう少しで一騒動になる
所だったと言われた。
私の上司と総務部がどう対処するか考えあぐねていたらしい。
今思えば笑い話だ・・・。
 
12、3年前、清里周辺に行った時、偶然にも私が出てきた場所に遭遇した。
知人が八ヶ岳山麓に別荘を建てた時、その人が私の家族を乗せ付近の
観光地などをドライブしていた時の事だった。
偶然とは思えなかった。
ハッキリと其所の場所が想い出されフラッシュバックした。
「アッ、ここだ!」と皆に昔の想い出話をしたものだ。
 
その直ぐ近くには清里スキー場が出来ていた。
私が尾根を下りた時にはスキー場は無かったから28、9年ほど前の話になる。