高校3年生の時、従兄弟からの情報で雑誌にカヌーの作り方が出ていると聞いた。
それは「暮らしの手帖」の第2世紀号の初刊号だった。
図書館に行き、生まれて初めて本を借りてきた。
夏休みも終わりに近かった。それから一ヶ月間カヌー作りに没頭した。
制作費は材料費、工具も含めて1万円ほどだった。
当時貯めていた貯金を全て使った。
骨組みは木材と塩ビのパイプで材木屋数カ所と水道屋で調達し、
留め具は金物屋を回って集めた。全て一からの手作りで殆ど一人で制作した。
材料調達だけで一週間以上掛かった。
今なら東急ハンズやホームセンターがあるから直ぐに調達が出来るだろう。
長い木材をヤマハメイトに乗せて持ち帰った。
「暮らしの手帳」には「テント地の縫製は家族を拝み倒してやって貰え」と
書いていたので母に頼んでミシンで縫製して貰った。
こればかりは自分では出来なかった。
出来上がった船を見た父は「お前は以外と器用な所があるなあ」と感心した
のを覚えている。
長さが4メートル程あるが、折りたためるから物置に入れる事が出来る。
完成してから、友達を誘って海や川に繰り出した。川の水面から見える景色は
今までに見た事が無い風景だった。
当時、遊び過ぎた所為でその後の人生に狂いが生じたのは無理からぬ事かも知れない。
しかし、十分な「想い出」が出来た。
その29年後、帰省した時、そのカヌーで子供と一緒にカヌー遊びをした。
上の子は小学校高学年で最初にチャレンジしたが問題無く乗れた。
最初は安定せず、おっかなくて前のめりになっている。
下の子は全く平気な顔をしている。当時9歳だった。
このカヌーは以外と安定していて転覆した人はいない。
ウチの子らは以外と平気にこういった遊びが出来る。
岩の上から川にも飛び込みも出来る。都会っ子には無い一面だろうか?
保育園の時からスイミングに通った所為なのだろうか水を怖がらない。
足の着かない海で浮き輪を付けないと泳げないのは女房だけなのだ。