ホームページ http://mamo-007.sakura.ne.jp

パール、スリーエー、ロングピース

 パール、スリーエー、ロングピース パール、スリーエー、ロングピース と呪文を唱えながらタバコ屋に駆けていった。
少年時代、親父に“お使い”を頼まれ、買い物に走ったのだ。父は複数のタバコの銘柄を吸っていたので覚えるのが大変だった記憶がある。
 その銘柄が違う日もあったので呪文が別の場合もあったが間違って買って来ても叱られる事は無かった。
父が禁煙する前はチェリーが多かった様な覚えがある。今も銘柄が残っているのはロングピースだけだろう。
 
 わたすも2種類のタバコを吸っていた。ハイライトとプロムナードである。
 ハイライトはハッカ味の辛口でプロムナードはバニラのような甘口であった。ポケットにはいつも2箱、封の切られたタバコが入っていた。
 甘口と辛口は気分によって吸い分ける事もあったが味の違いを愉しみたかったのである。一服おきに吸うと、甘いタバコはより甘く、辛いタバコはより辛く感じられた。父もおそらく、そう言う理由で複数銘柄吸っていたのだろう。
 
 2種類のタバコを吸い分けている理由をコピーライターに話すとハイライトを吸っていたコピーライターが次に会った時、プロムナードを追加していた。
 
 わたすは30年前にタバコを買うのをやめた。しばらく酒席で隣の人のを拝借していた時もあったが完全に止めた。今では煙が大嫌いになった。
 
 父も母も私に“お使い”を頼むと脱兎のように駆けだして行くから弟より素早くて便利だったのだろう。料理をしている時に調味料が無いと私に頼めば調理に間に合うぐらい早く行ってこられた。弟は駆け出すような子ではなかった。
 
 金持ちの屋敷で呼びベルを鳴らして脱兎のように走り去った。当時、何をするにも走っていた。学校に行く時だけは歩いて行った。あのツマラナイ空間だけは走っていく気にはなれなかった。
 
 ウチの子供達に用事を頼んでも何時出かけるのか、日が暮れそうになるので自分で行ったりする。全く役に立ちはしない。