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初めての嘘

 昔、モハメド・アリにインタビュアーが「初めて嘘をついたのはいつか?」と聞いた事がある。アリは深く考え、時間を掛け思いだそうとしていたが結局アンサーは出来なかった。
 何故そんな質問をするのかと思ったが、ホラ吹きで有名だったアリに初っぱなにジャブをかましたかったのであろう。今思えば中々、ユニークな質問だった。日本人インタビュアーでは思い付かなかっただろう。
 
 私が初めて嘘をついたのは3歳か4歳か覚えていないが、シリカゲルか防腐剤を舐めた時であった。菓子袋の中に入っている「食べられません」を舐めてしまった時だった。空になった菓子袋の中にあった小袋の中を味見したのだ。
 それを察したのか両親が血相を変えて飛んで来た。「舐めたのか? 食べたのか?」と問いただす。あまりにも親の顔が恐ろしい形相だったのでクビを横に振った。それを見た両親は「ホッと」した面持ちになった。
 それが生まれて初めてついた私の嘘であった。
 
 両親の「ホッと」した顔を見て私の心もホッとした。「ウソも方便」とはこの事だろう。虚言は心を穏やかにしてくれる物だと思った。一種の麻薬であった。
 ちなみにシリカゲルか防腐剤は味も何もしなかった。
 
 大人になると嘘と言うよりも弁解に変わる。それがいたたまれなくなり、メンドークサくなって、しんどくなって来る。取調室で「すいません私がやりました」となるのであろうか?