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トンネル

 人気のない山へのアプローチで林道を歩いていると照明のないトンネルに出くわす事がある。
 直線のトンネルなら問題ないがカーブしていて照明のないトンネルは手強い。直線のトンネルは入り口から出口が見えるものだがカーブトンネルは出口が見えない。入って行くとカーブの途中で真っ暗闇になるのだ。
 
 人間というものは完全に闇になると一歩も足が前に進まない。単独ではなく二人で行ってもだ。一歩踏み出すと奈落の底に落ちる穴があるのではないかと疑心暗鬼になってしまい動けなくなるのである。
 普段は「真っ暗闇」になることは無い、山の中でも闇になることは無い。夜でも星や月明かりで周りの景色も見えるし、どん曇りでも周りは見える。
 
 出口の見えないトンネルを構わず突き進むとやがて後ろの入り口の光も見えなくなって立ち往生する羽目になる。仕方なく入り口の光がさす所まで戻りヘッドライトを取り出す事になる。
 大の男がヘッドライト無しで一人で山に入り、トンネルで一歩も動けなくなり引き返したと聞いた事があるが実感として分かった。 
  
 下山してから駅に向かうタクシーで運転手に「あそこのトンネルはライトが無いと通れない」と言うと「ライト無しで歩く方法がある」と教えてもらった事がある。
 それはトンネルに入る前に棒きれを用意するのだそうだ。この棒きれで闇から出てくる妖怪と闘う・・わけでは無い。この棒切れをトンネルの側面の壁に押しつけて歩くのだそうだ。
 なるほど、盲人の杖と同じだ・・・この運転手は昔、山の仕事をしていたのだろうと察せられた。
 
 もう一つ、不時の野営の際、暖を取る時に、雨に濡れて何も燃やす物がない場合、白樺の皮を燃やすと良いと教えてもらった。白樺の皮は濡れていても燃えるのだそうだ。このような事は山の本には書いていない。
 
 幸いにしてこのワザを使った事は今だに無い。こういったシチュエーションで誰かに実地で「こういった場合は、このようにするのだよ」と得意げに教えてやりたい処なのだがこういう機会は今後もありそうにない。
 
 
 
                  
 

道を歩いていると変わった雲が出ていたので急いで部屋に戻りシャッターを切ったが、既に凄さは消えていて普通の雲になっていた。スゴイ勢いで変化して行く。