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父の詫び状

 最初に勤めた会社を2年弱で辞めた。数年後、仕事を依頼にその会社を訪ねた。社長と話をすると「お父上から手紙を貰ったが返事を出せなくて申し訳ないと伝えておいて欲しい」と恐縮気味に言われた。
父とその社長は全く面識がない。ナンのことか解らずその日、実家に電話をした。
すると父が「たった2年で会社を辞めるなんて言うのは、はなはだ申し訳ないと言う旨の手紙を出した」と言った。もう今更、仕方ないことだから何も言えなかった。父は中学教師をしていて当時は中学卒で就職する人も多く父も就職の面倒を見ていた。
 私が次の会社を辞めた時に父がまた「詫び状を書いておこうか」と言ったので強く「出すな」と言った。
父にとっては2年弱で会社を辞めるというのは社会常識として考えられない行為だったのだろう。親としての責任を感じての詫び状だったのだろうが仕事のステップアップと言っても通じる時代ではなく今では考えられない話だ。